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妊娠初期のチアマゾール投与に関する注意喚起について(2011.11.30)

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2012年01月22日(Sun) 10:21 by drharasho

先天性甲状腺機能低下症に関わる情報ではありませんが、
バセドウ病による甲状腺機能亢進症の治療薬である
抗甲状腺薬の重大な副作用に関する、日本発の最新知見です。

これから数年以内に結論をだすために、全国の多数施設の
協力による研究が進展中ですが、重要な研究結果が得られたため、
中間報告という形で日本甲状腺学会のホームページ等で
公開されています。

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妊娠初期のチアマゾール投与に関する注意喚起について(2011.11.30)
http://www.japanthyroid.jp/doctor/information/index.html

バセドウ病は妊娠可能女性に多くみられ、我が国では大半が抗甲状腺薬治療をうけています。
抗甲状腺薬にはチアマゾール(MMI)とプロピルチオウラシル(PTU)の2薬剤があり
ますが、甲状腺機能亢進症に対する有効性と副作用の観点から、日本甲状腺学会編のバセド
ウ病治療に関するガイドラインではMMIを第1選択薬とすることを推奨してきています。


一方、以前からMMI服用バセドウ病患者の新生児に頭皮欠損、臍帯ヘルニアなどの奇形の
報告があり、とくに臍腸管遺残、気管食道瘻、食道閉鎖症、後鼻孔閉鎖症等重篤な奇形を含
むMMI embryopathy (MMI奇形症候群)と称せられる症候群とMMIとの関連性を疑う
報告が発表されてからは、妊娠バセドウ病患者にどちらの抗甲状腺薬を使用すべきか、非常
に難しい問題となってきました。「バセドウ病治療ガイドライン2011」では、MMI奇形症
候群を裏付ける根拠は十分ではないものの、万一の場合の母親の精神的ケアの点も考慮し、
「妊娠初期、少なくとも妊娠4~7週はMMIを使用しないほうが無難である。」とのステー
トメントとなっています. 今回、我が国で進行中の多施設前向きコホート研究「妊娠初期に
投与されたチアマゾールの妊娠結果に与える影響に関する前向き研究(Pregnancy Outcomes
of Exposure to Methimazole Study:POEMスタディ)」グループ
から、妊娠初期のMMI
継続曝露がMMI奇形症候群の発生、特に臍関連奇形と密接な関連性があることを示す中間
結果が報告されました。前向きコホート研究で初めて明らかにされたこの結果をふまえ、
能な限り妊娠初期のMMI継続は回避されるよう、甲状腺疾患の診療に当たられる医療機関
の皆さまに改めて注意を喚起したいと思います。


POEMスタディの中間結果によりますと、MMI群の関連奇形発生頻度は85生産児中5例
(95%信頼区間:1.9-13.2 %)と、予測される一般発生頻度の0.1 %に比較して極めて高率
でありました。
5例とも妊娠成立前から妊娠12週までのMMI継続曝露例であり、全ての症例
に臍関連奇形をみとめ、1例は頭皮欠損合併症例でした。一方、PTU群121例および抗甲状
腺薬非曝露群83例、MMI群のうち妊娠12週までにMMIを中止または他剤に変更した38例の
生産児には同類の奇形発生は認めませんでした。しかし妊娠初期PTU曝露やバセドウ病自体
とこれらの先天異常発生との関連性や、妊娠判明後早期のMMI中止で当該先天異常発生が回
避できるか等について検討するためには症例数がまだ十分ではありません。最終結論は、2014
年に予定されていますPOEMスタディの最終報告を待ちたいと考えています。
(POEMス
タディ中間報告結果、患者用説明文、製薬会社安全情報については下記ウェブサイトをご参照
下さい。)

現時点における、チアマゾール奇形症候群の発生を最小限に回避するための我々の考え方を
以下に示します。

・  バセドウ病による妊娠への悪影響を避けるためには,妊娠前に抗甲状腺薬やその他の方法
    で甲状腺機能のコントロールを十分に行うことが重要である。その際、妊娠初期のチアマ
    ゾール内服をできるだけ避けるために,妊娠は計画的に行う必要がある
.チアマゾールの
    服用を継続しながら妊娠する場合には、基礎体温測定と市販の妊娠診断薬等で妊娠の早期
    確認を指導し、妊娠が判明した時点でチアマゾール内服を中止にして直ちに来院させる。
    可能な限りチアマゾールは中止し、必要であればプロピルチオウラシルや無機ヨウ素に変
    更する。

・  副作用などでチウラジールが使用できない場合や,抗甲状腺薬治療では甲状腺機能を正常
    化できない場合には,手術やアイソトープ治療によって甲状腺機能を正常化させてから妊
    娠する方法を考慮する。


・  妊娠中に抗甲状腺薬を開始する場合には,妊娠初期*はプロピルチオウラシルを第1選択薬
    とするが、妊娠中期以降であれば副作用や効果の観点からチアマゾールを第1選択薬とする。
 
  *後鼻孔閉鎖・食道閉鎖発生の時期は妊娠7週まで、臍関連奇形発生の時期は妊娠9週まで、
     頭皮欠損発生の時期は15週までと考えられている。
    プロピルチオウラシルが副作用などで使えないなどの理由で,妊娠初期にチアマゾールを
    継続する場合には,臍関連奇形その他のチアマゾール関連先天異常合併のリスクに関して
    患者にカウンセリングを受ける方法があることを知らせる
(妊娠と薬情報センターホーム
    ページ参照:URL:http://www.ncchd.go.jp/kusuri/

1.「妊娠初期に投与されたチアマゾール(MMI)の妊娠結果に与える影響に関する前向き
     研究(Pregnancy Outcomes of Exposure to Methimazole Study : POEM study):中間
  報告について」(URL:http://www.ncchd.go.jp/kusuri/

2.「妊娠初期に内服した抗甲状腺薬が赤ちゃんに与える影響の調査」(POEMスタディ)と
   その中間結果から今後妊娠する際のご注意
 (患者用説明文)(URL:http://www.japanthyroid.jp/public/information/index.html)

3.「安全性情報:チアマゾールによる先天異常について」
  (URL: http://chugai-pharm.jp/hc/ss/pr/drug/news/detail/1259597529545/1.html?cmp=others&cha=gakkai_banner&seg=jta_1111
  (11月28日オープン予定))

2011年11月30日

日本甲状腺学会「バセドウ病薬物治療ガイドライン」作成委員会
委員長 中村 浩淑

「妊娠初期に投与された抗甲状腺薬の妊娠結果に与える影響に関する前向き研究
(Pregnancy Outcomes of Exposure to Methimazole Study: POEM Study)」
グループ研究代表者 荒田 尚子


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