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新生児マススクリーニングの濾紙採血以外で発見された先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)

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2008年01月21日(Mon) 11:28

新生児マススクリーニングは、基礎講座で説明させて頂いているように、
「大勢の健康な人の集団から、特定の病気を持った人を効率よく見つけだす」ことを
目的としています。

  そのため、「見つけるためにかかった費用+治療などにかかる費用」<<< 
「マススクリーニングをしなかったためにかかる費用=発見が遅れたお子さんの
治療や介護にかかる費用」
となることが、マススクリーニングを公的な費用(=税金)で
行うための大前提となっています。

 つまり、マススクリーニングで全ての患者さん(この場合は、先天性甲状腺機能
低下症の全てのお子さん)を見つけることが目的となってはいません。全ての患者
さんを見つけるためには、例えば生まれてから1か月毎に、全てのお子さんを対象
として採血を繰り返すことが必要ですが、それでは費用が限りなく大きくなりますので、
基本的には生後4~7日目に「1回だけ」採血が行われます

  1回の採血だけですので、マススクリーニングで発見できないクレチン症のお子さんも、
残念なことですが、少数ながらおられます。
医学用語(生物統計用語)では「偽陰性
(ぎいんせい)」と言いますが、マススクリーニングの限界でありやむお得ない理由も
ありますので、このサイトや私の書く論文では「マススクリーニングで発見されなかった例」
とか「マススクリーニング非発見例」と呼ばせて頂いています。

 その中には、マススクリーニング以外に、新生児期や乳幼児期にたまたま甲状腺
機能の検査が行われて、「甲状腺機能低下症」が疑われる場合があります。

 たいていは、「潜在性甲状腺機能低下症」と言われる程度のTSH軽度高値、FT4
正常のパターンをとります。

 この時期(生まれてから生後2~3か月くらいまで)の潜在性甲状腺機能低下症の
診断は、小児内分泌専門医でも統一された基準がなく、またマススクリーニング以外で
たまたま「潜在性甲状腺機能低下症」の検査値を示した場合の解釈は、かなり難しい
ですので、できれば小児内分泌専門医にご相談することをお勧めしています

 なぜそうした「潜在性甲状腺機能低下症」の検査値を示すのかについて、きちんとした
調査研究は行われていませんが、多くの場合、やはりマススクリーニングの基準値
(カットオフ値)にまで至らない程度の極軽度の甲状腺機能低下症であることが考えられ
ます。

 TSHのカットオフ値は、各都道府県・政令市で委託している(スクリーニング)検査
センター毎に決められていますが、およそ「10 mIU/L」(全血値)となっています。
この値は一般の病院で採血される血清値に換算しますと約「16 mIU/L」となります。

 一方、乳幼児期の潜在性甲状腺機能低下症はTSHが8~15 mIU/L程度のことが
あります
ので、マススクリーニングでは発見できない程度の甲状腺機能低下症である、
ということになります。 幸いなことに、このようにマススクリーニングで発見できない程度の
極軽い甲状腺機能低下症のお子さんは、生後数か月以降に治療が開始されても、発育
発達に大きな問題のないことが示されています
(少なくとも知能検査での異常のないことが
ほとんどです)。

 またこうした長期に甲状腺機能低下症が持続する永続性潜在性甲状腺機能低下症
だけではなく、出生後の臍の消毒にヨード含有消毒剤(商品名:イソジンなど)が使われ
たりした場合、マススクリーニングで異常なしでも、たまたま検査されて一過性潜在性
甲状腺機能低下症を示す場合もありますので、そうした場合の解釈もやはり小児内分泌
専門医に判断を仰ぐことが望ましいと言えます。

  このような一過性潜在性甲状腺機能低下症の場合は、もちろん治療は必要としません。
むしろあわてて治療を始めてしまうと、「治療で甲状腺機能が正常となったのか」「治療を
しなくても正常化したのか」すぐには区別がつけられなくなります。

 そのため、不要な長期の治療を受けることになりますので、その意味でも、治療を始めて
しまう前に、小児内分泌専門医に相談することが重要
です。


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