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子宮卵管造影による一過性甲状腺機能低下症

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2008年01月21日(Mon) 13:29

子宮卵管造影(しんきゅうらんかんぞうえい)というのは、妊娠しにくい女性について、
その原因を調べるために行われる検査です。

 妊娠の第一歩は、受精(卵子と精子の結合)です。卵子と精子が出会う場所は、
普通は卵管です。あまり自覚されていないことですが、実は女性のお腹の中(腹腔)は
体外とつながっています。つまり卵子が保管されている卵巣(らんそう)は、腹腔中にあり、
子宮の上部の両側から伸びている卵管の先が開いていて、卵巣から排卵の時に腹腔中に
飛び出した卵子が、卵管の開口部から入り込み、卵管の中で精子とであって受精がおこります。

 妊娠しにくい(不妊症の)女性の多くで、この卵管が狭くなっていたり、閉塞していることが
あり、そうした状態であるか無いかを調べる方法が「子宮卵管造影」です。
 人の体にレントゲン線(X線)をあてると、組織の密度にしたがって濃い部分が「白く」うつり、
薄い部分が「黒く」うつります。骨や歯が一番密度が濃いため「白く」うつり、空気の多い肺などは
「黒く」うつります。
 卵管に狭い部分がないか(狭窄)などを調べるためには、子宮から造影剤といわれる「濃い液体」を
入れてやります。このレントゲンで白くうつる液体を「造影剤」と呼びますが、その主な成分が
「ヨード(ヨウ素)」です。
 子宮卵管造影に使われた造影剤は、血液中に吸収さて腎臓から尿中に排泄されたり、子宮の
入り口から体外に排出されますが、一時的に体内のヨード濃度を高めます
  4-2 お母さんの食生活による甲状腺機能異常に説明していますが、ヨードは甲状腺ホルモンの
材料であるとともに、多すぎるとWolff-Chaikoff効果のため、甲状腺ホルモンの産生を押さえ、
一時的な甲状腺機能低下症(一過性甲状腺機能低下症)を引き起こしてしまいます。

 子宮卵管造影をうけて、その直後に妊娠されたお母さんの中には、ヨード過剰が長期に続き、
そのためにお腹の赤ちゃんにもヨード過剰による甲状腺機能低下症(胎児甲状腺機能低下症)が、
稀ですがおきることがあります。
 そのため、子宮卵管造影を受けたお母さんから生まれた、一部の赤ちゃんが新生児マス
スクリーニングでTSH高値となり、クレチン症疑いとして精密検査をうけ、なかには甲状腺ホルモン薬
(チラーヂンS)による治療を必要としたことが報告されています。
  わが国での生殖補助医療(体外受精など)により誕生した赤ちゃんは既に年間1万人を超えて
います。子宮卵管造影の施行数はその数倍になると推定されていますが、未だ子宮卵管造影後の
一過性甲状腺機能低下症は数えるほどしか報告されていません。

  残念ながら、どのような場合に子宮卵管造影後の一過性甲状腺機能低下症がおきるかは未だ
わかっていません。子宮卵管造影を受けても、あまり心配しすぎる必要はありませんが、お母さん
自身に甲状腺機能低下症が起きるという報告もありますので、妊産婦の甲状腺疾患に詳しい甲状腺
専門医に相談しつつ、お腹の赤ちゃんにも気をつけることが望ましいでしょう。

  また、子宮卵管造影後に生まれた赤ちゃんが、新生児マススクリーニングでTSH高値となり、
クレチン症疑いとして精密検査をうけた場合は、赤ちゃんの担当の先生にそのことを報告し、ヨード過剰
による一過性甲状腺機能低下症を頭に置きながら、必要に応じて甲状腺ホルモン薬による治療

うけることが望ましいと言えます。

  ヨード過剰の検査のためには、お母さんの血液中・尿中・母乳中、赤ちゃんの血液中・尿中ヨード濃度
の測定が必要
です。このことも、赤ちゃんの担当の先生とよく相談することが勧められます。


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