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原子力事故時のヨウ素剤の服用(HPの転載)

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2011年03月13日(Sun) 09:31

茨城県薬剤師会の薬事情報からの転載

この度の、原子力施設事故では、ヨウ素剤について多数のご質問が寄せられました。

ヨウ素剤については、すでに、動燃アスファルト固化処理施設事故の時に、会報48号(97年4月)
薬事情報だより(P7)に掲載いたしましたが、一部改編し再度お知らせいたします。  
          
薬事情報室

Q:原子力施設での臨界事故があった場合、どうしてヨウ素剤を服用するのか

A:先月、東海村の原子力施設において臨界事故が発生し問題となったが、臨界事故が発生した場合、
ヨウ素、キセノン、クリプトン等、種々の放射性物質が放出されると言われている。この中で、
放射性ヨウ素(131I)は、放出される割合の最も高い放射性物質であり、施設を破壊してしまう
ほどの事故の場合、気化して大気中に広範囲に拡散しやすい上、呼吸や飲食により体内に吸収され
やすいため、内部被曝を起こす物質として特に注目されている。しかし、今回の事故では施設が破壊
されなかったことや、ウランの量が少なかったことなどから、放射性ヨウ素は発生したが大気中に
放出されたのは極僅かであった。10月5日にJCO周辺の雑草から131Iが最大0.037Bq/g検出されたが、
これを食べると仮定しても実効線量当量は0.00036mSv(0.036ミリレム)となり、人の年間線量限度
1mSvの約3000分の1ほどであった。

 本来、ヨウ素は、甲状腺ホルモンの構成成分として生体に必須の微量元素であり、体内には約25mgが
存在する。また、海草に多く含まれ、1日の摂取量は成人で約1.5mgとされている。一方、甲状腺は、
ヨウ素を取り込み蓄積するという機能があるため、原子力施設の事故で環境中に放出された131Iが
体内に吸収されると、甲状腺で即座に甲状腺ホルモンに合成され、甲状腺組織の中で放射能を放出し続
ける。その結果、放射能による甲状腺障害が起こり、晩発性の障害として甲状腺腫や甲状腺機能低下症を
引き起こすとされている。

 これらの障害を防ぐためには、被曝する前に放射能をもたないヨウ素を服用し、甲状腺をヨウ素で飽和
しておく必要がある。こうすることにより、131Iにより内部被爆しても甲状腺には取り込まれず予防的
効果が期待できる。その際、ヨウ素剤の効果は投与する時期に大きく依存するとされており、表に示す
とおり被曝直前に摂取した時に効果が最大で、時間が経過するとその効果は薄くなる。

100mgのKIを投与したときの131I摂取防止率

投与時期    131I摂取防止率

被曝24時間前投与 約70%
被曝12時間前投与 約90%
被曝直前投与    約97%
被曝3時間後    約50%
被曝6時間後    防止できない

 また、ヨウ素の吸収は、食後で30分後、空腹時で5分後から始まるとされ、一旦甲状腺ホルモンに
取り込まれ有機化されると、体内に長期間貯留するため、放射性ヨウ素に被爆する前に、ヨウ素剤を
服用することが重要である。

 予防投与量としては、1日1回服用し成人でヨウ化カリウム130mg(ヨウ素として100mg)、1歳以下の
乳幼児でヨウ化カリウム65mg(ヨウ素として50mg)
とされ、服用期間としては、事故の影響度にもよるが、
3~7日程度と考えられる。なお、ヨウ化カリウムの入手が困難である場合は、市販のルゴール液
(ヨウ化カリウムとヨードを2対1の割合で水に溶かしたもの)や、ヨウ素レシチン、または、試薬の
ヨウ化カリウム等を使うことも可能である。

 ヨウ素の副作用としては、甲状腺障害(腺腫、機能失調)、ヨウ素アレルギー(発熱、関節痛、蕁麻疹等)、
耳下腺炎等の報告があるが、一般には1回 130mgのヨウ化カリウムの経口投与では、たいした副作用は
発生しないとされている。しかし、食物からの摂取量が通常1日1.5mgであることからすると、被曝線量が
5レム以下の場合は使用しないほうが良いとされ、逆に50レム以上の場合は積極的に使用することが望まれている。
 現在、茨城県では、下記自治体施設や保健所に、夜間人口の1日分(244,000人×2錠)と、原子力
医療センターに6日分のヨウ化カリウム錠を分散配置している。

保管場所
   
保管数量(50mg錠)
東海村役場   
64,000
ひたちなか市生涯保健センター   
120,000
ひたちなか保健所   
10,000
日立市南部支所防災倉庫   
60,000
日立保健所   
104,000
常陸太田保健サービスセンター   
24,000
那珂町役場   
24,000
大洗町消防本部防災倉庫   
42,000
水戸市常澄保健センター   
12,000
鉾田保健所   
18,000
茨城町役場(薬品室)   
10,000
小 計   
488,000
原子力医療センター(国立水戸病院内)   
2,928,000
合 計   
3,416,000

[参考]
1) 学術 放射能汚染 ヨウ素を:高橋保志、道薬誌3 (6) 11 (1986)
2) 放射能とヨウ素:ドラッグビュー(山口県 薬) (23) 6 (1986)
3) チェルノブイリ被曝のヨード剤による予防:石井淳、日本医事新報№3496 136 (1991)
4) 原子力事故緊急時医療活動マニュアル(その5):菅野商会医薬品情報 (17) 42 (1988)
5) 原子力事故緊急時医療活動マニュアル(その6):菅野商会医薬品情報 (20) 57 (1988)


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