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Q&A:放射性物質曝露と食事の関係

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2011年03月20日(Sun) 12:32

Q: はじめまして。 7歳の息子が先天性甲状腺機能低下症で生後すぐからヂラーチンSを服用しています。
今、薬不足になるのではということも心配ですが、放射線の影響が心配です。ひじきなど
ヨウ素食品をとった方がいいといわれる中、食事で気をつけることはあるのでしょうか。

A: ご心配なことと思います。
 どの地域にお住まいか(福島原発からの距離)により、放射性物質曝露の危険性が
異なりますので、その対応も異なってきます。

 史上最悪の原子力事故といわれるチェルノブイリ事故でも、その影響範囲は、
100km以内と言われています。そうですので、この範囲内にお住まいでなければ、
今回の出来事による健康被害の恐れは、きわめて低く、なんら特別の対策をとる
必要はありません。

 むしろ食事などからの過剰ヨード(ヨウ素)の摂取は、甲状腺における甲状腺ホルモンの
産生を妨害するおそれもあり、甲状腺機能低下症の原因ともなりかねません。
 ヨードを含んだサプリメントやヨードの豊富と言われる食品のとりすぎは害になりますので、
避けて下さい。もちろん商品名「イソジン」などのうがい薬、消毒薬を飲むことは禁止です。

 福島原発からの直接影響の恐れのある地域では、政府や自治体の原子力災害対策本部が、
放射性ヨードの影響を軽減させるため、「安定ヨウ素剤」という「薬」の服用指示をだすことがあります。
その際は、医師立ち会いの下に行われるのが原則で、また事前に過剰ヨードを摂取していると、
安定ヨウ素剤の効果が十分発揮されないこともあり、勝手なヨードの過剰摂取はむしろ有害です。

 それ以外、食べ物や飲料水などが放射性ヨードに汚染され、それを知らずに飲食してしまう
おそれが心配になるでしょう。そうした状況が起きないよう、また仮に微量の放射性ヨードなどが
食べ物、飲料水を汚染しても、それを摂取することのないよう、政府(厚生労働省)や自治体が
対策を行います。むしろそうした対策こそ、政府(厚生労働省)や自治体の役割と言えます。

 でも、万が一、口にしてしまったら・・・その前に予防できないのか、そんな疑問がでてきます。

 「こども健康倶楽部」をよく利用されているなら、「先天性甲状腺機能低下症講座」を
ご理解頂いていることと思いますが、改めて簡単に「ヨウ素(ヨード)と甲状腺」について
説明しておきます。

 簡単に説明すると、人の体に欠かすことの出来ない「甲状腺ホルモン」の、大事な原料が、
ヨードです。そのためヨード不足があると、甲状腺機能低下症がおこり、ヨード欠乏地帯で
ヨード欠乏症により起こった先天性甲状腺機能低下症を「クレチン症」と言ってきました。

 人は食事の中から甲状腺ホルモン合成に必要なヨードを毎日摂取し、甲状腺に蓄えておきます。
蓄えた分から甲状腺ホルモンを作り、血液中を流れるヨードにより蓄えが減った分を補充しています。

 この血液中を流れているヨードは、いわゆる「安定ヨウ素剤」の成分と同じものですが、
放射性ヨードも成分的には同じもので、ただ原子が不安定=分裂し放射線をだす、
という性質を持っています。
 甲状腺は安定したヨウ素であれ、放射性ヨードであれ、血液中にあれば、同じように
甲状腺内に取り込み、甲状腺ホルモンの一部に使ってしまうので、それが甲状腺内に
蓄えられたままだと、甲状腺がんを引き起こす原因となる、という仕組みになっています。

 安定ヨウ素剤を事前に飲むというのは、血液中に大量のヨードを取り込むと、それが
甲状腺内に大量に取り込まれ、それ以上、甲状腺の中にヨードが取り込まれない状況を
作ることが出来ますし、血液中に大量のヨードがあると、放射性ヨードが薄められ、
たとえ
体内に放射性ヨードが張り込んでも、甲状腺内に取り込まれることなく、尿中にでて、
体外に排泄されてしまうことが期待されるわけです。

 チェルノブイリ事故の後、子どもの甲状腺がんが沢山見られたベラルーシなどは、
土壌中のヨードが少ない「ヨード欠乏地帯」で、子どもや妊婦さんも多かれ少なかれ、
ヨード欠乏状態にありました
。そのため、放射性ヨードが体内に摂取された後は、
甲状腺ホルモンの原料とするため、放射性ヨードが甲状腺に相当量取り込まれ、
甲状腺がんの原因となったと考えられています


 それに対し、日本は、世界的にも稀な「ヨード過剰地帯」で、世界標準から見ると、
常時ヨード過剰の状態にあると考えられています。そのため、普段の食事に加え、
あえて過剰ヨードを摂取する必要は無いと考えられています。

 海藻を含む海産物、魚介類、昆布だしの料理を、週に数回摂取していれば、
むしろ過剰ヨードの状態にありますので、無理に大量の海藻類を改めて食べる必要は
ありません。
 唯一困るのは、海外から輸入した食品で、塩味のないものばかり食べている場合
海外では塩の中にヨードが添加されており、塩味のないものは、ヨード含量の少ない
食品である可能性があります。
 ふだんから和食中心で国産の食品を摂取している場合は、そうした心配はほとんどありません


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