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クレチン症講座ー上級編

Lesson18 : 一過性(先天性)甲状腺機能低下症

18-1 一過性甲状腺機能低下症とは

新生児のマススクリーニングは、生後4〜7日ころの血液中のTSH(甲状腺刺激ホルモン)を測定し、その値が一定の値(カットオフ値)以上の場合、医療機関で精密検査を行います。
そのため、甲状腺機能低下症がずっと続く永続性先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)以外に、最終的には、一時的なTSH値上昇だったと診断されるお子さんも精密検査を受けることになります。
そうしたお子さんをまとめて、「一過性甲状腺機能異常症」と言います。
この一過性甲状腺機能異常症のお子さんは、治療を必要とするくらい甲状腺機能低下症の程度が強いものから、2回目の採血(再採血)の時には正常化する程度の極軽度の甲状腺機能低下症まで様々です。
重症度で分けるとつぎのようになります。

(治療を要する)
重度の一過性甲状腺機能低下症
(治療を要しない)
軽度の一過性甲状腺機能低下症
(これが「一過性高TSH血症」に相当します)
(再採血時にはTSHが正常化している)
偽陽性
高 <<<<<<<<<<<<<<<<<<<<< 重症度 >>>>>>>>>>>>>>>>>>>> 低

18-2 一過性高TSH血症について

一過性高TSH血症というのは、正確な医学用語としては「乳児一過性高TSH血症」といわれ、一応の定義(診断するための条件)が決まっています。
「甲状腺ホルモンが基準範囲で、TSHだけが基準範囲より少し高値」で「治療しないで様子を見ている内に、TSHが正常化する」場合を、「一過性高TSH血症」と定義しているわけですが、実はこの用語は、「病名」というより状態をそのまま述べた「診断名」に過ぎません。
小児の甲状腺疾患の専門医の立場から言うと、「一過性高TSH血症」は単なる、検査値の変化を述べているのに過ぎないので、「病名」(病気)ではないと考えるようになっています。

ですから、検査で甲状腺機能低下症とみられる数値(つまり甲状腺ホルモンが低い値)であったり、甲状腺機能低下症の症状(乳児期は発育発達の遅れ、皮膚の乾燥、便秘、長引く黄疸、かすれ声、低体温、不活発など)があれば「一過性高TSH血症」とはいえません。一過性高TSH血症は(定義からいって)原則として「無症状」です。

まして、TSHが軽度高値(5~10mIU/L以上)が続いている場合に、「一過性」と診断するのは不適切であり、次に述べる「潜在性甲状腺機能低下症」と診断し、必要に応じて治療をすべきものと考えられます。

18-3 治療が行われるケース

甲状腺ホルモンが低い値でかつ甲状腺刺激ホルモン(TSH)が高い値の場合、「顕在性(明らかな)甲状腺機能低下症」です。問題なく治療の対象となります。
甲状腺ホルモンが基準範囲内、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が高い値の場合、「潜在性甲状腺機能低下症」と言いますが、子どもの場合、特にFT4が基準範囲の下半分にある場合は、やはり甲状腺ホルモンが不足していると考えるべきだと思われます。

生後6か月時点で、「潜在性甲状腺機能低下症」の検査結果を示す場合は、それまでの甲状腺刺激ホルモン(TSH)の値の変化の具合にもよりますが、まず「軽症クレチン症」と考え、詳しい検査をする時期まで甲状腺ホルモン薬(チラーヂンS)を飲み続けていただくケースがほとんどです。

このようなお子さんのような状態を、「持続性高TSH血症」という診断名をつけて、治療をせずに数年以上経過をみるケースもあるようですが、お子さんの発育発達のことを考えると、治療するほうが適切と思われます。