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小児内分泌専門家の医師(聖徳大学児童学部児童学科教授 原田正平先生)のコラムや、先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)をはじめ小児科関連に関する情報やサービスを掲載します。

放射性ヨードと甲状腺疾患

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2011年03月24日(Thu) 12:27 by drharasho

関東圏の水道水から放射性ヨードが検出され、
水道水の放射性ヨウ素が100Bq/kgを超える場合の水道の対応について、
乳児用調製粉乳を水道水で溶かして乳児に与える等、乳児による水道水の
摂取を控えること(平成23年3月21日付け健水発0321第1号)という、
厚生労働省からの通知が、東京都内でも実施されたことから、
不安な気持ちをお持ちの方も多いと思われます。

放射能被爆と甲状腺機能低下症 のことは、すでに3月13日にお伝えしたところですが、
テレビのコメンテーターか誰か、非専門家が、「甲状腺の病気があると危険」といった、
誤った情報を流し、不安になったかたから、医療施設に問い合わせが多く寄せられている
とのことです。

私自身が直接そのコメントを見聞きしていないので、正確なところはわかりませんが、
たぶん、甲状腺機能亢進症を起こす「バセドウ病」の場合、甲状腺にヨードの取り込
みが増える、という中途半端な知識で、でたらめを言っているのではないかと想像します。

これは完全に誤った情報です。

まず第一に、今回問題となっている放射性ヨード(I-131)自体、バセドウ病の治療に
使われるものだ
、ということです。

バセドウ病は、甲状腺か活発に働きすぎるために、甲状腺ホルモンが過剰となり、
日常生活に不具合がでてくる病気です。最近では歌手の「綾香」さんがバセドウ病
ということで有名になりました。

一般には、甲状腺の働きを抑える、抗甲状腺薬という飲み薬で治療したり、場合によって
は、手術で働きすぎる甲状腺をとってしまったりします。

放射性ヨードを使う治療も、米国で盛んに行われ、最近は、日本でも普通に行われています。
その仕組みとしては、大量の放射性ヨードをカプセルで飲んでもらい、それが甲状腺に
取り込まれて、甲状腺細胞を破壊して、機能亢進症をおさえる、というものです。

ここで大事なことは、治療に使われ放射性ヨードは、今回、水道水や野菜などから検出され
たものより、桁違いに多い量だということです。それくらい多い量だと、甲状腺細胞を
破壊できるだけの放射線をだすわけですが、甲状腺内部にとどまり、余分なものは、
体の他の部分に影響を与えることなく、尿中に排泄されていきます。

放射性ヨードで治療されたバセドウ病の人たちが、何十年か後に、がんのリスクが高まらないか、
ということが調査研究されていますが、現在のところ、がんの過剰発生は、確かめられていません、
その意味で、日本でも欧米でも、「安全な治療」として広まっています。

若年者(日本では18歳未満)の放射性ヨード治療は、長期の安全性が、十分研究されていない、
ということで、第一選択の治療とはなっていませんが、米国では15歳以上の治療も珍しくありません。

このように、現在水道水から検出されるより、はるかに多い量の放射性ヨードでも、
発がんの危険性はほとんど問題になっていないことを、十分理解してください。

またそれほど微量であれば、甲状腺機能を低下させることもなく、先天性甲状腺機能低下症の
お子さんに、問題を起こすこともけしてありません。

以上のように、先天性甲状腺機能低下症であれ、甲状腺機能亢進症であれ、特別に
放射性ヨードの影響をうけやすい、ということは無いわけですから、どうぞご安心ください。

もちろん、他のお子さんと同じで、乳児(原則1歳未満)に飲ませたり、ミルクを溶かすのに使うのは、
国(厚生労働省)や各自治体の指示にしたがって、控えるのはいうまでもないことです。

この場合の基準も、安全に安全に、という過剰な基準ともいえますので、他に飲料水の無い場合は、
一時的に使用するのに、さしつかえない値であることも、理解しておくことが大事です。

非専門家による、いい加減な情報には、耳を貸さないようにしてください。
本当に罪作りで、困ったことです。メディアの責任も大きいですね。


































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