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小児内分泌専門家の医師(聖徳大学児童学部児童学科教授 原田正平先生)のコラムや、フェニルケトン尿症をはじめ小児科関連に関する情報やサービスを掲載します。

フェニルケトン尿症が疑われたら

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2010年08月31日(Tue) 17:05 by drharasho

「こども健康倶楽部」の「フェニルケトン尿症(PKU)」のページは、
「フェニルケトン尿症(PKU)」という病気の説明や診断されてからの
食事療法などについて詳しく説明させて頂いています。

しかし、「フェニルケトン尿症(PKU)」が疑われて、
病院などで詳しい検査がされるまでのことについては、
未だあまり詳しく説明していませんでした。

これからそうした「フェニルケトン尿症が疑われたら」という、
解説のページも作っていきたいと思いますが、
まずは簡単な説明をさせていただきます。

フェニルケトン尿症は英語でPhenylketonuriaといい、
一部の頭文字をとってPKUと略されます。
以下、PKUと書かせて頂きます。

日本や世界の多くの国では、生まれてすぐ発見し、
すぐ治療が必要な病気について、
生まれて5日めころの足の裏から採血し検査する、
新生児マススクリーニングが行われています。

日本ではそうした新生児マススクリーニング検査は、
都道府県・政令市による公的な事業として行われ、
検査料が税金から支払われています。
それを一般に「先天代謝異常等検査事業」と呼びます。

マススクリーニングの仕組みを世界で初めて考えつき、
実際に行ったのは、米国のガスリー博士で、
その時、対象となった病気がPKUであり、
ガスリー博士は「新生児マススクリーニングの父」と呼ばれています。

それぞれの国では対象となる病気は異なっていますが、
日本ではPKUも含めた6疾患が対象となっています。

早期発見・早期治療がいずれの病気でも大切ですので、
生まれて5日目前後に赤ちゃんの足の裏から採血し、
代謝異常検査用の特殊な採血用濾紙にしみこませ、
それぞれの地域の検査センターに郵送されます。

濾紙にしみこませた血液を自然乾燥することで、
郵送中の血液の変化を最小限にすることができ、
新生児マススクリーニングが可能となりました。
(乾燥血液濾紙、濾紙血と呼びます)

この図と説明文は、PKUと同じく、
新生児マススクリーニングの対象疾患となっている、
先天性甲状腺機能低下症のスクリーニングの仕組みを説明したものですが、
PKUでも基本的な流れは同じです。

PKUではアミノ酸の一種のフェニルアラニンが体内で、
チロシンという別のアミノ酸に「代謝」される過程が障害されるため
血液中のフェニルアラニン濃度が高くなります。

そこで赤ちゃんから採取した濾紙血中の、
フェニルアラニン濃度を測定して、
一定以上の値を示す場合、PKUが疑われることになります。

新生児マススクリーニングでは、
病気の赤ちゃんを見逃さないこと(偽陰性をださない)、
病気ではない赤ちゃんを無闇に病気と疑わないこと(偽陽性をださない)
の両方が求められます。

そのため、PKUが強く疑われる場合、つまり
濾紙血のフェニルアラニン濃度が異常高値(例えば6~10mg/dl以上)の場合、
直ちに精密検査のために専門医のいる病院受診が勧められます。

この場合は、PKUに関する詳しい検査(BH4負荷試験など)が行われ、
フェニルアラニン高値が続く場合、
フェニルアラニンの含まれないミルクによる治療(食事療法)が、
直ちに必要となりますので、必ず指定された病院を受診して下さい。

お近くの主な病院は病院リストで調べることができます

2009年度に日本では、生まれたときの体重が2,000g以上だったお子さん、
1,069,733人の中で、直ちに精密検査となったお子さんは16人でした。
約67,000人に1人ですからとても稀だと言うことになります。

出生体重2,000g未満のお子さんは、生まれてすぐ母乳やミルクを
飲めないことが多く、そうした場合、PKUの検査が正確にできないことがあるため、
それ以上の体重のお子さんとは少し取り扱いがちがってきます。
(別の機会に説明させて頂きます。)

一方、異常高値ではないけれど、「正常」とも言えない値の場合、
2回目の採血が必要とされます(再採血とか再採取とか言います)。

この基準値は検査施設毎に少しずつ違いますが、
およそ2mg/dl以上の場合、再採血となります。
2009年度の場合、1,069,733人中291人、
0.027%の赤ちゃんが再採血となっています。

これは約3,700人に1人ですから、
直ちに精密検査とあるお子さんの20倍ほどになり、
ほぼ日本中で毎日1人のお子さんが、
フェニルケントン尿症疑いと言われていることになります。

しかし、その中の一部のお子さんだけが、
再採血でもフェニルアラニン濃度が一定の基準を超えて、
精密検査を受けることになります。

2008年度での調査では、再採血となったうちの、
約20%のお子さんが精密検査となっています。

このように再採血となる大部分のお子さんは、
2回目の検査で「正常」となりますし、
直ちに検査や治療が必要な場合は、
ほとんどの場合、最初の検査で精密検査となっていますので、
あまりご心配なさらないようにして下さい。

ただ、再採血後でもフェニルアラニン濃度がまだ高い場合がありますので、
再採血が必要ですと言われた場合は、必ず採血をするようにしてください。


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