感染がない時に局所抗菌薬は創傷治癒を促進するか?

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2011年03月29日(Tue) 00:16

もう被災地での診療において、小さな外傷の手当は必要無いかも知れませんが、
「新しい創傷治療」の一つの証明となる論文です。

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感染がない時に局所抗菌薬は創傷治癒を促進するか?
http://www.nankodo.co.jp/JWJ/archive/JW11-0315-04.html

Do Topical Antibiotics Promote Wound Healing in the Absence of Infection?
2011 March 15   

皮膚科専門医は感染リスクがかなり低い場合でさえ、小さな手術創に局所抗菌薬を頻繁に使用する。
企業が支援した最近の3件の研究では、感染の可能性が低い処置において、局所抗菌薬がワセリン基
剤軟膏(Aquaphor)と比べて、創傷治癒の促進に有益であるかどうかの検討が行われた。ワセリン
基剤軟膏と比較されたのは、

    * 2つの脂漏性角化症を体幹の両側でshave excisionした患者30人において、
      Polymyxin B-bacitracin(P/B)と比較
    * 黒色丘疹性皮膚症の2つの丘疹を顔面の両側でscissor removalしたアフリカ系アメリカ人
      患者20人において、P/Bと比較
    * レーザーで形成されたた前腕の創傷を有する患者20人において、P/Bあるいは
       polymyxin B/bacitracin/neomycinと比較

いずれの研究においても、局所抗菌薬の使用で創傷治癒は改善しなかった。

コメント:以前の2件の研究(
J Amer Acad Dermatol 1985; 13:207:http://www.eblue.org/article/S0190-9622(85)70160-0/abstract
Ann Pharmacother 1997; 31:559:http://www.theannals.com/cgi/content/abstract/31/5/559
では、小児の小さな掻き傷や虫さされでの感染頻度が、局所抗菌薬軟膏で減少することが示された。
これらの知見が成人において意味をもつかどうかは不明である。局所抗菌薬がER(Emergency Room)での
小さな創傷縫合に有効であることも明らかになっている
(Acad Emerg Med 1995; 2:4:http://www.medscape.com/medline/abstract/7606610
Am J Emerg Med 2004; 22:1:http://www.ajemjournal.com/article/S0735-6757(03)00220-1/abstract)。

それにもかかわらず、局所抗菌薬は皮膚科学においては有用であることはほとんどない。主な例外として
膿痂疹の治療があり、それはmupirocinと retapamulinが経口の薬物と同等の効果を有するためである。
しかし局所抗菌薬には、褥瘡や静脈性または糖尿病性の創傷の感染治療において証明された利益がなく、
皮膚科的な術後の創傷感染予防における効果は、ワセリンを超えるものではないことが証明されている。
今回の3件の小規模だが最新の試験でも、局所抗菌薬が創傷治癒を改善しなかったことが示されている。
皮膚科専門医は、手術後の局所抗菌薬の使用を中止すべきである。局所抗菌薬はワセリンよりも高価で、
接触性皮膚炎が生じる恐れがあり、まれにアナフィラキシーを起こすことがある。

— Jan V. Hirschmann, MD

Published in Journal Watch Dermatology March 11, 2011

CITATION(S):

Taylor SC et al. Postprocedural wound-healing efficacy following removal of dermatosis
papulosa nigra lesions in an African American population: A comparison of a skin protectant
ointment and a topical antibiotic. J Am Acad Dermatol 2011 Mar; 64:S30.
(http://dx.doi.org/10.1016/j.jaad.2010.11.009)
Medline abstract (Free)


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