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岩波書店「世界」5月号
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2011年04月10日(Sun) 12:31
3月11日の東北関東大震災で亡くなられた方々に、心より哀悼申し上げます。
また被災によってご家族やご親戚、あるいはご友人を失われ、いまも避難所
などで不自由な生活を余儀なくされている方々に、心よりお見舞い申し上げ
ます。
福島第一原発の事故はなお進行中です。地震・津波の被害に加えて、原子力
災害の不安の中で暮らしておられる地域の方々に、心よりのお見舞いと激励を
申し上げます。
「世界」編集部
定価 840 円(本体800 円)(送料 108円)
ISSN 0582-4532 雑誌 05501-05
2011年5月号 4月8日発売
読者へ
編集部
>>>公開中[PDF:608KB]
http://www.iwanami.co.jp/sekai/2011/05/pdf/skm1105-1.pdf
Ⅰ 未来の崩壊か、未来の創出か
──いま、私たちはどこにいるのか──
戦後史上最悪の、そして近代史上においてもほとんど例を見ない
津波による激烈な災害と、それに引き続く福島第一原発の深刻な大事故。
災害は、それを受けた社会のあり方、あるいはその弱さを、すさまじい
力で切り取って見せる。日常の生活ではほとんど意識されない社会の本
質が、そこに浮かび上がってくる。
私たちは、これまでのように生きることができないに違いない。
近代技術の結果としての原発に、私たちの生命と生活が脅かされている。
いま私たちはどこにいるのか。どこに向かうべきなのか。──本号には、
この未曾有の事態の中で、この未曾有の事態の意味を考える多くの論考
が寄せられた。
私らは犠牲者に見つめられている
──ル・モンド紙フィリップ・ポンス記者の問いに
大江健三郎 (作家)
巨大複合災害に思う
──「原発安全神話」はいかにしてつくられたか?
内橋克人 (経済評論家)
敗北力
鶴見俊輔 (哲学者)
人間のおごり
坂本義和 (東京大学名誉教授)
いま人間であること──大地震の災禍の中で考える
宮田光雄 (東北大学名誉教授)
専門家の社会的責任
池内 了 (名古屋大学名誉教授)
人の生きてあるところ、語りは生まれる
松谷みよ子 (児童文学作家)
「人間愛」の社会へ──禍の経験を希望につなぐために
岩田靖夫 (東北大学名誉教授)
生まれてくる生命(いのち)を支える社会を創る
中野佳裕 (国際基督教大学助手・研究員)
振り出しにもどる
木田 元 (中央大学名誉教授)
二度目の誕生日──私たちは再生できるか
坂手洋二 (劇作家)
近代産業文明の最前線に立つ
西谷 修 (東京外国語大学)
未来の追悼──『ツナミの小形而上学』より
ジャン・ピエール・デュピュイ (哲学者)、訳=橋本一径
天災・人災の彼方へ
森崎和江 (詩人、作家)
脳力のレッスン 109
緊急編 東日本大震災の衝撃を受け止めて──近代主義者の覚悟
寺島実郎
制動(ブレーキ)・大洪水のこと
宇佐美圭司 (画家)
Ⅱ 福島原発炉心溶融事故と放射能汚染
──何が起きたのか──
いま、日本は幾度目かの被曝を体験しつつある。かつて戦争で、次に国際的な
核軍備拡大のなかで、そして現在は、自ら推し進めてきた原子力政策の結果として。
津波は、電力事業者や政府機関の甘い予想を凌駕し、世界最大級の原発基地に
押し寄せ、非常用電源や燃料を押し流した。原子炉の冷却機能が失われ、炉心に損傷
が起こり、発生した水素によって次々に建屋が爆発していった。大量の放射性物質が
漏れ出し、空気と土と海とを汚染しつづけている。地震と津波による被害に加えて、
どれほどの苦痛と悲しみが原発によってもたらされているだろうか (豊田直巳氏)。
繰り返し警告されてきた「原発震災」 (石橋克彦氏) が、まさに現実のものと
なってしまった。電力事業者や原子力安全保安院は「想定外」と繰り返すが、実際に
は何度も、今回のような事態に陥る危険性が指摘されてきたのである (田中三彦氏)。
放出された放射性物質は、すでに1979年のスリーマイル島事故を超えたとさ
る。いったいどれほどの被害が起こるのか。今回、首都圏に放射能が到達する前代未聞
の事態となった (石田 力氏 )が、原子力災害の損害はどう補償されるのか。そのあまり
の被害の巨大さは、原子力事業の持つ本質的問題を示している (品川正治氏)。
日本の原子力推進政策は、「フクシマ」という国際共通語を誕生させ、破綻した。
もはや元の地点に戻るべきではない。原子力政策は根本から変わらなければならない
(伴 英幸氏)。そして、自然エネルギーを中心とした社会への「復興」が求められている
(飯田哲也氏/鎌仲ひとみ氏)。
対談 自然エネルギーの社会へ再起しよう
飯田哲也 (環境エネルギー政策研究所所長)
鎌仲ひとみ (映画監督)
まさに「原発震災」だ──「根拠なき自己過信」の果てに
石橋克彦 (神戸大学名誉教授)
福島第一原発事故はけっして“想定外”ではない
田中三彦 (元原子炉製造技術者)
放射能雲が東京へ
石田 力 (国際関係論)
原子力と損害保険──ブレーキをかける矜持と見識
品川正治 (経済同友会終身幹事)
原子力政策は変わらなければならない
伴 英幸 (原子力資料情報室共同代表)
「フクシマ」という道標──核エネルギー政策の転換点
鈴木真奈美 (ジャーナリスト)
原発事故 ロシアはどう見たか──核兵器保有国の苛立ちと思惑
石川一洋 (NHK解説委員)
風下の悲しみ、再び──プリピャチと南相馬
高橋卓志 (神宮寺住職)
ジャーナリストたちは何を見たか
──日本ビジュアル・ジャーナリスト協会取材記
豊田直巳 (フォトジャーナリスト)
メディア批評 第41回
神保太郎
Ⅲ 被災・救援・復興
──もっとも大切なこととは──
大津波がのこした深い爪痕、拡大が懸念される放射能汚染を思うと、被災地が
復興、再生に至るには、莫大な労力と費用、そして長い時間がかかると覚悟せ
ざるを得ない。それでもこの地で生き、子どもたちの世代へと未来をつないで
いくために、私たちは「何が起こったのか」「何がなされたか」を知り、現実
から学ばなければならない。Ⅲ 章の論考・エッセイ集は、そのうえでさまざま
な参照軸となるだろう。
これまでの生活のあり方を問われるのは、決して被災した人々だけではない。
私たちはみな、あまりにももろい「食とエネルギーの土台」(結城登美雄氏) に
立ってきた。とりわけ「中央」すなわち首都東京は、長きにわたって、東北の
地に非対称の関係を強いてきた。
また、大災害における「危機管理」の対応は、日本社会に根づく政・官・財
それに学者とマスコミも加わった責任者不在の体制を浮きぼりにしている。震
災復興は、こうした旧来のシステム・利権構造の延長線上にあってはならない。
この衝撃を、社会経済の歪み、そしてエネルギー・食料政策の転換を促す契機と
することは可能か。それは、私たちが「大切なもの」に立ち戻れるかどうかに
かかっている。
超巨大地震・津波の実態
今村文彦 (東北大学)
医療支援はどう始まったか──岩手県からの報告
山本太郎 (長崎大学熱帯医学研究所)
<ルポ>石巻市・希望と再生を求めて
高成田 享 (前朝日新聞石巻支局長)
幸ひ思ひ出立申すべし
簾内敬司 (作家)
漁業の再生と食の未来
結城登美雄(民俗研究家)
西へ、南へ!──そして新しい反核平和の声を
吉田 司 (ノンフィクション作家)
震災日録
森まゆみ (作家)
世界論壇月評──各国はどう見て、どう報じたか
朱 建 栄/竹田いさみ/吉田文彦/石郷岡建
後戻りせず、前へ進もう──日本復興計画の提言
金子 勝 (慶應義塾大学)
戦後国際貿易ルールの理想に帰れ (上)
伊東光晴 (京都大学名誉教授)
復興ニューディールへの提言
辻井 喬 (詩人、作家)
天国は
田 原 (詩人)
日本への礼儀
高 銀 (詩人)
読者談話室
おきなわ散歩 第29回「マンダラ」
比嘉 慂
グラビア フォトドキュメント 東日本大震災
JVJA (日本ビジュアル・ジャーナリスト協会)
A SHOT OF THE WORLD 原発被曝労働という闇
樋口健二 (写真家)
表紙の言葉
鈴木邦弘 (写真家)
表紙写真=鈴木邦弘
デザイン=赤崎正一 (協力=小笠原幸介+野網雄太)
Webサイト制作=田原浩一
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知の逆襲 第2弾 日本破壊計画
未来の扉を開くために
風速計
辺見 庸
標なき終わりへの未来論
加藤典洋
我らの狂気を「生き延びる」こと
浜 矩子
中東で踏み出されたグローバル市民主義へのはじめの一歩
赤瀬川原平
歴史からの挑戦
グラビア
櫻画報
シェアハウス 渋家の人々
濱野智史
「民主主義2・0」を構想する 日本だから可能な民主主義の未来
高原基彰
「日本型システム」の終焉 「自由」で「創発的」な市民活動を
広井良典
「創造的定常経済」の構想 資本主義・社会主義・エコロジーの融合
鈴木謙介
未来のための資本主義社会 善意だけでは救われない人びとのために
飯田哲也
「第4の革命」で未来を切り開く地域分散型自然エネルギー開発の可能性
橋本 努
革命社会から承認社会へ 「疎外」から「自己肯定」に転換した40年
斎藤貴男
会社に頼らない生き方 自営業者に寛容な社会を
神永正博
幸福を感じづらい日本人 統計が語る日本の未来像
室 謙二
バービーちゃんの民主主義 アメリカの憲法と日本の憲法
宇野常寛
「次の50年」を設計する 「戦後」を正しく「忘れる」ために
【添付ファイル】