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治療開始時期について
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2009年11月02日(Mon) 00:36 by drharasho
コミュニティルームなどで、よく話題となることとして、
「治療開始時期」の問題があります。
もちろん甲状腺機能低下症がある場合は、早期治療が重要なのですが、
新生児マススクリーニングで発見された場合に、
それぞれのお子さんの状況により、
治療開始時期が違ってきますので、少し説明させて頂きます。
新生児マススクリーニングの検査のために赤ちゃんから採血されるのは、
生後5日ころになります。
これは先天性甲状腺機能低下症の効率的な
発見のために、
一番適切な時期が生後5日ころだからです。
この初回採血の濾紙血中TSH(甲状腺刺激ホルモン)が、
異常高値(一般には全血値として30 mIU/L以上)の場合、
中等度から重度の甲状腺機能低下症があると考えられるため、
2回目の採血をすることなく、ただちに精密検査をするために、
小児内分泌専門医のいる医療機関への受診が勧められます。
そして先天性甲状腺機能低下症が強く疑われる場合、
「理想的には」生後2週間以内の治療開始(レボチロキシン内服)が、
望ましいとされます。
生後5日目の濾紙血中TSHが(一般的に)10~30 mIU/L(全血値)の場合、
一時的なTSH上昇の場合がほとんどのため(一番多い原因は、
イソジンなどヨード含有消毒剤による臍消毒など)、
すぐ検査や治療をしないで、
2回目の採血をします。
この2回目の採血(再採血)の濾紙血中TSHが下がりきらず、
10 mIU/L以上くらいの場合、精密検査を行います。
この再採血の時期は一般的に、生後2~3週間となります。
この2回目の採血の後に精密検査となり、
甲状腺機能低下症が
強く疑われるお子さんの場合、
治療開始が生後3~4週間程度となります。
上に述べた、中等度から重度の甲状腺機能低下症では、
生後2週間以内の治療が望ましいわけですが、
再採血後に甲状腺機能低下症と診断されるお子さんの場合、
軽度の甲状腺機能低下症が多く(まれに中等度以上の甲状腺機能低下症)、
治療開始が生後3~4週間程度となっても、
治療が遅いと言うことではありません。
日本の新生児マススクリーニングで見つけられた、
軽度から中等度の
甲状腺機能低下症のお子さんの、
治療成績(6歳以上での知能検査結果)は
全く問題ないことが、
報告されています。
さらに極軽度から軽度の甲状腺機能低下症の場合、
例えば血清TSHが5~10mIU/L程度ですと、
生後3~6か月くらいまで、未治療で経過観察することも多く、
そうした場合でも、発育・発達に問題がおきることは、
ほとんど無い事が報告されています。
欧米では、濾紙血TSH 15mIU/Lがカットオフ値であることが多く、
これは血清TSHに換算すると24~30mIU/Lに相当し、
この程度の軽度の甲状腺機能低下症は最初から、
スクリーニングされていません。
日本では、より慎重なスクリーニングが行われているため、
極軽度から軽度の甲状腺機能低下症が疑われた場合も、
精密検査が行われ、無治療で経過観察することになっていると、
ご理解下さい。