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放射性ヨウ素への被ばくに対し安定ヨウ素剤(ヨウ化カリウム)を予防服用した妊婦から 出生した児および同じく小児の管理指針-初期管理編-(第1 版)

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2011年04月01日(Fri) 09:18

放射性ヨウ素への被ばくに対し安定ヨウ素剤(ヨウ化カリウム)を予防服用した妊婦から
出生した児および同じく小児の管理指針-初期管理編-(第1 版)
http://jspe.umin.jp/shinsai.htm

2011 年3 月31 日

日本小児内分泌学会

東北地方太平洋沖地震に関わる小児甲状腺疾患診療プロジェクトチーム

 小児,特に乳幼児が大量の放射性ヨウ素に曝されると、後に甲状腺がんの発症率が増加
することが知られている。甲状腺がんの発症を抑える目的で一定の被ばくが予想される場
合には安定ヨウ素剤が投与され、これにより放射性ヨウ素の甲状腺への取り込みをブロッ
クすることが可能である。安定ヨウ素剤の投与方法は「原子力災害時における安定ヨウ素
剤予防服用の考え方について」に従い、災害対策本部の指示のもと行われる。
http://www.nsc.go.jp/bousai/page3/houkoku02.pdf

 一方、こうしたヨウ素の大量投与は小児の甲状腺機能に一過性の障害をきたすだけでな
く、妊婦あるいは授乳中の女性に対する投与では胎児~新生児の甲状腺機能に一過性の障
害をきたすことが知られている。

 チェルノブイリ原子力発電所事故の際、安定ヨウ素剤の投与(原則1 回投与)を受けた
小児12,084 人では、長期にわたる甲状腺機能障害は認められなかったこと、生後1 日目に
安定ヨウ素剤の投与を受けた新生児3,214 人では、甲状腺機能低下症が12 名(0.37%)に
認められたが、16~20 日後にはすべて正常化したことがポーランドから報告されている。
このような一時的な甲状腺機能低下症によって神経発達に影響があるかどうかについて信
頼のおける報告はない。

 妊婦に安定ヨウ素剤を投与した場合には、胎児の甲状腺腫や甲状腺機能低下をきたすこ
とがあり、母体の甲状腺機能検査とともに、出生した新生児の甲状腺機能を経時的に評価
することが重要である。一方、授乳中の女性に安定ヨウ素剤を投与した場合には、母乳を
介して新生児~乳児の甲状腺機能に障害をきたすことがあり、経時的な甲状腺機能の評価
が必要となる。さらに、原則的には一定期間の母乳休止が必要となる。また、小児、特に
乳幼児に安定ヨウ素剤を投与した場合にも、適切な時期に甲状腺機能の評価が必要となる。

 なお、安定ヨウ素剤の効果は24 時間であり、引き続き被ばくが続く場合は24 時間毎の
追加内服が必要とされる。小児・妊婦・授乳婦は1 回内服後、被ばく地域から避難するこ
とが原則である。2 回以上の投与がなされた場合には甲状腺機能異常の頻度が増加すると
予想される。

管理指針:

I. 妊婦が安定ヨウ素剤を予防服用した場合

①出生前検査妊婦に対する安定ヨウ素剤投与の時期・回数を確認し、妊婦自身の甲
状腺機能検査(TSH、FT4)を評価し、胎児超音波検査では胎児の甲状腺腫の有無に
注意する。検査の結果、母体が甲状腺機能低下症を有していると判明した場合には、
直ちに十分な量の甲状腺ホルモンの補充を開始する。特に、胎児に対する影響を考
慮して安定ヨウ素剤の連用を避ける対応が必要であり、甲状腺機能検査は迅速かつ
優先的におこなわれるべきである。

②出生後検査出生後の新生児の甲状腺機能(TSH、FT4)を評価する。日齢3 以降の
検査値の評価は先天性甲状腺機能低下症マススクリーニングのガイドラインに準
じる。すなわち、TSH が血清表示で16 以上24 μU/ml 未満は再検、24~48 μU/ml
以上あるいはFT4 が1.5 ng/dl 未満の場合には、甲状腺機能低下症と診断し、直ち
に甲状腺ホルモンの補充療法を開始する。なお、臍帯血のTSH は生理的に著しい上
昇を示すので評価が困難である。
http://jspe.umin.jp/gak_dl/guide102980817.pdf

II. 授乳中の女性が安定ヨウ素剤を予防服用した場合

 母乳を介した児への放射性ヨウ素(131I)の移行を防ぐため、原則的に直ちに母乳
哺乳を休止とする。やむを得ぬ理由で母乳哺乳がなされた新生児~乳児に対しては、
安定ヨウ素剤投与の時期・回数を確認し、投与後2~4 週で児の甲状腺機能(TSH、
FT4)を評価する。TSH が基準値内でFT4 が1.2 ng/dl 以上(1~6 か月)、1.0 ng/dl
以上(6 か月以降)であれば甲状腺機能に異常なしと判断する。これ以外の場合、2
~4 週間隔で検査を継続する。なお、TSH が10 μU/ml 以上かつFT4 が年齢の基準
値未満の際には、直ちに甲状腺ホルモンの補充療法を開始する。

 なお、母乳哺育の休止が必要とされる期間については、個々の状況により異なると
考えられるので本管理指針では一般的な期間を示すことができない。

III. 小児(新生児から中学生まで)が安定ヨウ素剤を予防服用した場合

 安定ヨウ素剤投与の時期・回数を確認し、投与後2~4 週で甲状腺機能(TSH、FT4)
を評価する。TSH が基準値内でFT4 が1.2 ng/dl 以上(1~6 か月)、1.0 ng/dl 以上
(6 か月以降)であれば甲状腺機能に異常なしと判断する。これ以外の場合、2~4
週間隔で検査を継続する。また、TSH が10 μU/ml 以上かつFT4 が年齢の基準値未
満の際には、甲状腺機能低下症と診断し、直ちに甲状腺ホルモンの補充療法を開始
する。特に、3 歳までの乳幼児に関しては安定ヨウ素剤の連用を避ける対応が必要
であり、甲状腺機能検査は迅速かつ優先的におこなわれるべきである。

IV. 甲状腺機能低下症に対する治療

 L-サイロキシン(L-T4)の初期治療量は、新生児(日、乳幼児(6 歳まで)5 μg /kg/日、
学童以上(小日とし、2~4 週ごとに甲状腺機能を再検し、TSH を基付近に維持するように
適宜増減する。なお、治療が必ヨウ素剤の投与による一過性の甲状腺機能低下症では機能
低下症や後天性の甲状腺機能低下症である可能性専門施設へ依頼することが望ましい。
http://jspe.umin.jp/gak_dl/guide102980817.pdf

V. 長期管理

 被ばくした小児に関しては将来の甲状腺がんの発症イランス管理が必要である。長期
管理についての指針する。

 なお、本管理指針は小児内分泌専門医以外の医師が利用すいるが、その後の継続的な
管理については可能な限り小児内が望ましい。管理方針についての相談は
日本小児内分泌学会事務局(jspe@ac-square.co.jp)「震災小児甲状腺PT」宛にて受け
付ける。
 別紙「管理票」(PDF)は、安定ヨウ素剤を投与された管理対象者のフォローアップ引き継ぎ
に役立つだけでなく、将来のための有用なデータとなるため学会として集計報告を行う
場合には可能な限りデータ提供の協力をお願いする。


日本小児内分泌学会

東北地方太平洋沖地震に関わる小児甲状腺疾患診療プロジェPT)

皆川真規*(千葉大学)
伊藤順庸*(金沢医科大学)
鬼形和道*(島根大学)
長崎啓祐(新潟大学)
鳴海覚志(慶応大学)
難波範行*(大阪大学)
原田正平(国立成育医療研究センター)


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