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小児内分泌専門家の医師(聖徳大学児童学部児童学科教授 原田正平先生)のコラムや、先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)をはじめ小児科関連に関する情報やサービスを掲載します。

「新型インフルエンザワクチンで薬害を起こさないために」

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2009年08月19日(Wed) 09:34 by drharasho

MRIC by 医療ガバナンス学会 で発行しているメールマガジンに、表題の記事が載りました。 重要な話ですので、転載させて頂きます(了解済み)。 ============================ ▽ 新型インフルエンザワクチンで薬害を起こさないために ▽ 東京大学医科学研究所 先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門 上昌広 ※今回の記事は村上龍氏が主宰する Japan Mail MediaJMMで配信した文面を加筆 修正しました。 2009年8月19日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 新型インフルエンザに関する報道はめっきりと減りましたが、患者数は夏の間 も増え続けています。8月4日、世界保健機構(WHO)は全世界の死亡者数は1,154 人に上ると発表しました。この中で、まだ死者が出ていない日本は驚異的ですが、 日本で死亡者が出るのは時間の問題でしょう。 ちなみに、季節性インフルエンザでも毎年約1万人が死亡していますし、過去 の経験から、2~3年もすれば、新型インフルエンザはそのまま季節性インフル エンザとなって流行を繰り返すと言われています。もっと、長期的視点に立って、 新型インフルエンザ対策を考えたいものです。今回は、新型インフルエンザワク チンが抱える問題について、ご紹介したいと思います。 【エビデンスのない新型インフルエンザワクチン】 厚労省は、秋から冬にかけての流行に備えて、新型インフルエンザワクチンの 購入を検討しています。このような報道を見て、皆さんは、「ワクチンは接種す るのが当然だ。接種すれば感染を防げる。」とお考えではないでしょうか。 意外かもしれませんが、季節性インフルエンザワクチンには、あまり予防効果 はありません。重症化を防ぐ可能性があると言われていますが、それも100%で はありません。その効果は、ワクチンの型が合っていない場合10~30%、型が合っ ていても40~80%程度です。 実は、厚労省が季節性インフルエンザワクチンの有効性を認めて、予防接種法 に位置づけているのは、65歳以上と基礎疾患のある人だけです。裏返せば、厚労 省は、それ以外の人々には定期接種するほどの安全性・有効性は明らかではない と考えていることになります。 では、新型インフルエンザワクチンの効果はどうでしょうか。新型インフルエ ンザワクチンも、季節性インフルエンザワクチンと同程度の効果と推測されてい ますが、世界中で初めて使うのですから、どの国もどの製薬企業も、十分なデー タを持っていません。既に治験を始めている国もありますが、治験では、少数の 患者を対象に、短期間しか観察できませんから、長期的な有効性や稀な副作用に 関して十分な情報を集めることが出来ません。つまり、新型インフルエンザワク チンに関しては、有効性も安全性も、よくわからないまま使おうとしていること になります。 【副作用は避けられない】 このように考えると、我が国では、十分な議論をしないまま、エビデンスのな いワクチンが多数の国民に接種されようとしていることになります。仮に、副作 用の頻度が0.01%~0.001%程度であったとしても、数千万人にワクチンを接種 すれば、数百人~数千人に副作用が起こり、重大な社会問題を引き起こします。 もし、新型インフルエンザの致死率が高く、ワクチンによる救命が期待できる なら、接種は合理的です。しかしながら、現時点で有効性・副作用に関する情報 は限られています。誰もワクチンのリスクとベネフィットを天秤にかけることが 出来ません。 このような状況の中、WHOは、ワクチンを大規模に接種すれば、副作用は避け られないと明言しています。さらに、各国が少数のデータで迅速承認するのであ れば、安全性への配慮を忘れてはならないと警告しています。これは、WHO内に いる公衆衛生の専門家たちの発信ですが、専門家としての誠意を感じます。 ところが厚労省は、ワクチンの安全性について、国民に一切説明していません。 あたかも、「すべてのワクチンには必ず副作用リスクがある」という当たり前の ことを「隠して」いるように見えます。この点は、WHOの専門家とは対照的で、 厚労省内で新型インフルエンザ対策を企画・立案する医系技官は、医師として大 きな問題があると言わざるを得ません。 【日本の過去のワクチンに関する経験】 日本では、ワクチンの薬害訴訟が繰り返されてきました。例えば、種痘・イン フルエンザ・三種混合(DPT)・新三種混合(MMR)などが挙げられます。 このような訴訟のたびに、厚労省や自治体は予防接種を中止し、自らの責任を 回避してきました。この結果、リスクとベネフィットのバランスについて、十分 に議論されることはありませんでした。 ワクチン接種を中止すれば、ワクチンの副作用はなくなりますが、副作用が発 生する人数よりもずっと多くの人が、ワクチンで回避可能な感染症に罹ってしま います。皆さん、日本が麻疹や結核の罹患率が先進国で最低で、海外から「伝染 病輸出国」と非難されているのはご存じでしょうか。これは、薬害事件の際に、 十分な議論を怠ってきたツケです。 【米国の過去のワクチン薬害】 ワクチンによる薬害は、何も我が国だけが困っている訳ではありません。米国 も、同様の苦い経験があります。 1976年、ニュージャージーでH1N1型の新型インフルエンザAが流行しました。 この事態を憂慮した米国政府は、早急にワクチンを開発し、4000万人以上に接種 しましたが、ギラン・バレー症候群という神経系の副作用(先日、亡くなった大 原麗子さんの病気です)が多発し、ワクチン接種は中止されました。この件は様 々なメディアで報道され、当時のニクソン大統領は議会で責任追及、CDC長官は 更迭されました。 この事件に関しては、後日、多くの研究者が検証し、さまざまな問題点が明ら かになっています。例えば、ギラン・バレー症候群の発生率は100万人あたり、 ワクチン接種していない集団で0.97人、ワクチン接種した成人の集団で4.9~ 11.7人でした。この事実は、新しく開発された新型インフルエンザワクチンが、 「危険」であることを意味しています。 【米国は過去に学んで無過失補償制度を整備】 この事件をきっかけに、米国ではワクチン副作用に関する国民的議論が巻き起 こりました。 その結果、米国では1988年に、National Vaccine Injury Compensation Program (VICP)が設立され、ワクチンによる副作用が発生した人は、十分な補償 を受けることができるようになりました。従来、副作用が起きた人は、訴訟を起 こして賠償金を請求する以外に、救済を求める方法はなかったのですが、VICP設 立によって、国・ワクチンメーカー・医療関係者など、誰かの責任追及をせずと も、補償を受ける道が開かれたのです(無過失補償制度)。これによって、無過 失補償を受けるか、あるいは無過失補償を拒否して訴訟を起こすか、米国民は選 択できるようになりました。 VICPが支払う補償の財源は、ワクチン一本に75セント上乗せされた税金で賄っ ています。つまり、誰に起こるかわからない副作用リスクに対して、ワクチン接 種を受ける人々が保険をかけているようなものです。 【弥縫策に終始した厚労省】 米国の経験は、副作用と薬害は区別して考えるべきことを示しています。副作 用はなくなりませんが、薬害は社会的な議論を通じて克服できるかもしれません。 一方、日本の薬害対策は弥縫策に終始しています。厚労省は、薬害事件が起こ るたびに、ワクチンを定期接種の対象から除外したり、定期接種といえども任意 (自己責任)で接種するように、予防接種法改正してきました。この結果、予防 接種は国家賠償訴訟の対象からはずれ、賠償責任は医療現場や製薬企業に押しつ けられました。これでは、厚労省が責任回避したと言われても仕方ありません。 私は、厚労省こそが訴えられるべきだと主張している訳ではありません。問題 は、ワクチン被害の救済の機会が平等でないことです。現行制度では、訴訟した 人だけが補償金を受け取り、訴訟しなかった人は泣き寝入りです。新型インフル エンザワクチンが、国民的な関心を呼んでいる今こそ、国民が納得できる救済方 法はどうあるべきか、建設的な議論をすべきではないでしょうか。このままでは、 新型インフルエンザワクチンでも、薬害を繰り返しそうです。 【新型インフルエンザワクチンと予防接種法】 これまでの配信で、新型インフルエンザ騒動では、厚労省の不適切な対応が医 療現場を混乱に陥れたことを紹介してきました。実は、インフルエンザワクチン でも混乱が生じそうです。 問題は、新型インフルエンザワクチンが予防接種法に位置づけられていないこ とです。このままでは、新型インフルエンザワクチンは定期接種の対象とはなら ず、国が予算措置したとしても、副作用の補償は、国の被害救済制度ではなく、 製薬企業の拠出金で賄われることになります。両者では雲泥の差です。 この問題は製薬企業にとっても深刻です。新型インフルエンザワクチンを販売 する外資系製薬企業は、無過失保障制度が整備されていない国とは契約したくは ありません。副作用が出た場合、自らが訴訟のリスクを負いかねないからです。 あまり、マスメディアでは報道されませんが、ワクチンの副作用対策について、 多くの先進国は責任追及と被害救済を分けて議論しています。ワクチン製造や承 認関わった製薬企業や審査当局は、所定のプロセスを踏んでいれば免責されます。 つまり、訴えられません。一方、被害者の救済は、国家が責任をもって対応しよ うとしています。残念ながら、我が国では何れも不十分です。免責制度はありま せんし、無過失補償制度が整備されているのは、出産だけです。 本来、新型インフルエンザワクチンは、公衆衛生上の目的で、国策として接種 するのですから、きちんと予防接種法に位置づけるべきです。先進諸国は、新型 インフルエンザを公衆衛生上の危機と位置づけ、国策として取り組んでいます。 現在、新型インフルエンザワクチンの供給は不足し、完全な売り手市場です。こ の状況では、我が国は十分量のワクチンを入手できないかもしれません。 余談ですが、民主党の足立信也参議院議員は、この問題に熱心に取り組んでい ます。先月、民主党が発表したINDEX2009医療政策の中には「無過失補償制度の 創設」という項目が設けられ、「産科のみならず、すべての診療科」で公的無過 失保障制度を整備すると明言しています。補償の原資は、保険料、公的保険料、 公的支出とし、制度運営のための基金を設立するとしています。時宜を得た政策 だと評価します。 【もっと大人の対応を!】 新型インフルエンザワクチンの導入にあたって、リスクとベネフィットをどの ように考えるか、国民的な議論が必須です。 ところが、マスメディアはこの問題を全く報道していません。このため、多く の国民は十分な判断材料を持ち合わせません。これまでのメディア報道を見る限 り、多くの国民は新型インフルエンザワクチンを有効と信じ、十分量のワクチン が確保出来れば、「国民皆接種」すべきだと考えているように見うけます。 しかしながら、一旦、副作用が報道されたら、世論は一変するでしょう。きっ と、ワクチンの問題点を挙げ、製薬企業や厚労省を糾弾すると思います。これで は、いつか来た道です。羮に懲りて膾を吹く。我が国は、必要以上にワクチンの リスクを強調し、ワクチンの使用を控えるようになるでしょう。これでワクチン ラグの完成です。結局、困るのは自分たちですが、自縄自縛となって動けません。 そうならないためにも、今まさに、もっと大人の議論をしようではありませんか。


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