女性と子どもをタバコの害から守ろう
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2010年05月13日(Thu) 17:19 by drharasho
(成育すこやかジャーナル第89号 2010/05/13)
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女性と子どもをタバコの害から守ろう
成育医療政策科学研究室長(総合診療部禁煙外来担当)原田 正平
今年で4年目となりますが、毎年この時期の「成育すこやかジャーナル」に「子どもを
タバコの害から守る」をテーマに書かせて頂いています。という
のも毎年5月31日が世
界保健機関(WHO)の定めた「世界禁煙デー」であり、その日から6月6日までが厚生
労働省による「禁煙週間」だ
からです。本当はこの時期だけではなく、子どものいる家庭
は毎日が「禁煙デー」であって欲しい、という願いを込めて書かせて頂きます。
今年のWHOの標語は「ジェンダーとたばこ~女性向けのマーケティングに重点をおい
て~」(Gender and tobacco with
an emphasis on marketing to women)であり、それを
受けて日本では「女性と子どもをタバコの害から守ろう」が
禁煙週間のテーマです。
この4年間の「世界禁煙デー」の標語は、2007年が「たばこ、煙のない環境」
(Smoke-free
environments)、2008年「たばこの害から若者を守ろう」(Tobacco-free
youth)、2009年が「警告!たばこ
の健康被害」(Tobacco Health Warnings)と続きま
した。タバコの有害性は言うまでもないことですが、20世紀までのタバ
コ規制対策と大
きく違うのは、「受動喫煙防止対策」と「女性と子どもの被害防止対策」と言えます。
受動喫煙による健康被害から
「女性と子ども」を、胎児期から生涯にわたって守るため
には、周りの人たちが吸わないことがなにより大事なことです。そのためにも、独立行政
法
人国立成育医療研究センターは2006年4月1日より「敷地内禁煙」となっています。
2004年に日本小児アレルギー学会と日本小児
科学会は共同で、「禁 煙 推 進 に 関
する日本小児アレルギー学会宣言2004」を発表し、その第一項に「日本小児アレルギ
ー学会会
員および医療従事者の禁煙を推進します。」と宣言しています。「敷地内禁煙」は
単なるお題目ではありません。職員が率先して社会の「無煙化」に取
り組み、女性と子ど
もをタバコの害から守る活動の先頭に立つという「宣言」であり、私たち独立行政法人国
立成育医療研究センターの職員に
は、医療者としての社会的、道義的責任が課せられてい
ます。
WHOによる「タバコ規制枠組み条約」が発効して5年がたち、日本
を含んだ締結国は、
よりしっかりしたタバコ規制の実施が求められ、厚生労働省もこの2月25日に「受動喫
煙防止対策」の強化を全国の自治
体に通知しています。その中には、「屋外であっても子
どもの利用が想定される公共的な空間では、受動喫煙防止のための配慮が必要である」、
「特
に健康被害を受けやすい乳幼児の家庭内受動喫煙防止のために、妊婦健診や両親教室
など様々な機会を捉えて、禁煙とその継続を図るよう啓発する」と
明記されています。
昨年のジャーナルで紹介した「サードハンドスモーク」の有害性を証明する論文が最近
だされ、強力な発癌物
質であるタバコ特異的ニトロサミン(Tobacco specific
Nitrosamines)が喫煙後の室内に長期間残留していることが報告
されました(M. Sleimana
et al. :Formation of carcinogens indoors by
surface-mediated reactions of nicotine
with nitrous acid, leading to
potential thirdhand smoke hazards. PNAS 2010; 107(15):
6576-6581)。女性と
子どもをタバコの害から守るために、周りにいる私たちで、タバコの
無い環境をつくりましょう。