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小児内分泌専門家の医師(聖徳大学児童学部児童学科教授 原田正平先生)のコラムや、先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)をはじめ小児科関連に関する情報やサービスを掲載します。

子どもをタバコ(の害)から守るために

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2008年03月01日(Sat) 23:50 by drharasho

毎年5月31日は世界禁煙デー(World No Tobacco Day)です。今年のテーマはTHEME: Tobacco-free Youth、つまり「タバコと無縁の若者」を育てようということになっています。 世界保健機関(WHO)のヨーロッパ地区のTobacco-free Europe(タバコの無い欧州)のサイトには、Tobacco is the leading preventable cause of death in the world. It is the only consumer product that kills when used as intended by its manufacturers. Tobacco kills up to 50% of its regular users.と書かれています。 タバコは防ぐことのできるはずの死をもたらす、この世で一番の原因である。 タバコは製造者の意図通りに用いて死をもたらす、唯一の消費財である。 タバコは常習喫煙者の半数を殺す。 このような製品の製造がこれ以上許されて良いはずはありませんが、殺人や戦争が無くならないのと同様に、タバコを今すぐこの世の中から無くすことができないのが現実です。 カナダの厚生労働省にあたるHealth Canadaのサイトに以下のように書かれています。 Q: Why not ban tobacco products? 何故タバコ製品が禁止されないのか? A: Unfortunately, tobacco use was widely established before its tragic health consequences became known. The addictive nature of tobacco is well documented, with some studies revealing that it can be harder to quit tobacco than it is to quit heroin or cocaine. Today, tobacco is consumed by more than five million Canadians, many of whom are addicted. A complete ban on tobacco products, therefore, would be extremely difficult to introduce and enforce. 残念ながら、タバコの与える健康障害が広く知られる前に、タバコが広まってしまった。そして、タバコの依存性は、ヘロインやコカインといった麻薬より止めにくいほど、強いことが知られてきている。今日(カナダでは)500万人以上が喫煙者であり、その多くがニコチン依存症です。そのため、タバコ製品の禁止は現実的ではありません。 このことは日本の現実でもありますが、さらに悪いことには、日本には「たばこ事業法」という法律があり、その第1条には「この法律は、たばこ専売制度の廃止に伴い、製造たばこに係る租税が財政収入において占める地位等にかんがみ、製造たばこの原料用としての国内産の葉たばこの生産及び買入れ並びに製造たばこの製造及び販売の事業等に関し所要の調整を行うことにより、我が国たばこ産業の健全な発展を図り、もつて財政収入の安定的確保及び国民経済の健全な発展に資することを目的とする。」と書かれています。 国民の健康より「たばこ産業の健全な発展」が優先されているわけです。 しかし、世界の国々はタバコを規制する現実的な道を選択し、「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」WHO Framework Convention on Tobacco Control (WHO FCTC)を発効させ(2005年2月27日)、2007年11月7日にGuineaが152カ国(地域)めとして批准しています。 このFCTCの第16章は「未成年者への販売禁止」(Article 16: Sales to and by minors)であり、その対策の一つが「自動販売機の規制」「to prohibit the introduction of tobacco vending machines within its jurisdiction or, as appropriate, to a total ban on tobacco vending machines. 」でした。 しかし、日本では自動販売機を減らしていく道ではなく、「成人識別機能付自販機」通称タスポTaspoの導入という、摩訶不思議な対策をとろうとしています。 また不思議なことに、未成年者対策ということはニュースで触れられていますが、その根拠がFCTCにあることを報道した記事は一つもないようです。 世界の国々が「タバコのもたらす健康障害」をきちんと認めて、将来的には「タバコの無い社会」を目指していることを、私たちも正しく理解しなければ、子どもをタバコの害から守ることはかないません。 子どもの手を引きながら、もう片方に火のついたタバコをもっている親。 子どもと一緒に喫煙室に入る親。 子どもにタバコを買いに行かせる親。 子どもと一緒の自家用車の中で喫煙する親。 学校の敷地内禁煙に反対する教職員。 公共の場所に喫煙所を新たに作ろうとする行政。 タバコ規制の意味について正しい報道をしないマスメディア。 無意味な喫煙シーンを放送するテレビ局。 自らが喫煙者であることを恥じない有名人。 子どもたちの未来を守るためにすべきことは何かを考えて行動したいものです。


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