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小児内分泌専門家の医師(聖徳大学児童学部児童学科教授 原田正平先生)のコラムや、先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)をはじめ小児科関連に関する情報やサービスを掲載します。

「大阪問題」

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2008年09月01日(Mon) 11:32 by drharasho

第35回日本マス・スクリーニング学会では、いわゆる「大阪問題」も改めて話題となりました。 この問題をおさらいしてみますと、次のようになります。 日本の新生児マススクリーニング(先天性代謝異常検査等事業)は、1977(昭和52)年に、当時の厚生省児童家庭局長から各都道府県知事・指定都市市長宛に「先天性代謝異常検査等の実施について」という通知が送られて始まりました。 形式的には国からの指導で、各地方自治体が事業を実施する、という形でした。 そのときは、国と地方自治体が費用を折半するかたちで行われ、全国一律に実施されたのですが、2001(平成13)年度からはその国からの予算が「一般財源化」され、全額地方自治体の予算で行われる事業となり、国の関与が形式的に途絶えてしまいました。 つまり、形の上では、都道府県知事・指定都市市長の誰かが、その地域での新生児マススクリーニングを止めてしまうことが、可能となってしまったわけです。 私たちが当たり前と考えている、日本で生まれた全ての赤ちゃんが、新生児マススクリーニングにより、先天的な病気による死の危険や重い後遺症から等しく守られることが、「21世紀」を迎えて当たり前でなくなる時代となったわけです。 しかし、日本マス・スクリーニング学会などの関係者以外、ことの重大性を強く訴えることはしませんでした。 学会要望書 そこに橋下大阪府知事による「大阪問題」となって、「そこにある危機」として現れてきたわけです。 幸い今回は日本小児科学会などの要望書が提出され、また大阪府の現場の方々の働きかけにより知事の「スクリーニング廃止案」は撤回されましたが、各自治体の首長が「廃止」できるという構造は変わっていません。 こうした仕組みを変えるためには、例えば「小児保健法」といった法律に「新生児マススクリーニング」は国と自治体の責任であると明記される必要がありますが、まだ実現には至っていません。 本当に「子ども」を大切にする国や自治体であるかが問われています。


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