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小児内分泌専門家の医師(聖徳大学児童学部児童学科教授 原田正平先生)のコラムや、先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)をはじめ小児科関連に関する情報やサービスを掲載します。

続「大阪問題」

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2008年09月05日(Fri) 18:06 by drharasho

「大阪問題」に関連して、新生児スクリーニングを仮に自費でするとしたら、どれくらい支払うかどうかと言うアンケートをとりました。その3か月間の結果を情報ルームにまとめたのですが、そこにコメントとして書いた文章を、こちらにも載せておきます。 公的なお金の使い道、優先順位を、もう一度考えて欲しいと思います。 ========================================== 大阪府の予算削減案は幸い撤回されましたが、今の日本の新生児マススクリーニングの基盤が、非常にもろいものであることが今回の「大阪問題」で明らかになりました。 ちょうど手元に届いた「日本小児科医会ニュース No.46」の中に、「内藤壽七郎記念賞」という小児科医にとって非常に名誉ある賞をうけた岩手県の小川英治先生が次のようなことを書かれていました。 「時代は遡るが、内藤先生は愛育村という名前のモデル村を「乳児死亡率が高い地域」として全国5ヵ村に指定したのがその活動の始まりであった。1936年(昭和11年)のことである。当時世界的先進国の中で乳児死亡率が100を超えていたのはトルコと日本だけであったという。今では考えられないことである。」 厚生労働省が平成19年の「人口動態統計(確定数)の概況」をホームページに公開しました。その中に1899年(明治32年)からの人口動態総覧の年次推移が示されています。出生千対の乳児死亡率は1899年が153.8、1900年が155.0、その後は改善するどころか1918年(大正7年)がピークで188.6となり、やっと下がり始めます。1936年は確かに116.7で、1939年の106.2から1940年の90.0に劇的に下がり、あとは第二次世界後の混乱期にも再上昇することなく急速に低下していきます。1975年(昭和50年)が10.0で翌年、9.3ととうとう一桁となり、2007年(平成19年)は2.6と世界最低(つまりは世界一乳児が死なない国ということです)の数字を示しています。 経済社会データランキングというサイトのデータによると、2000-2005年の統計で乳児死亡率が最も高いのはアフリカのシエラレオネで165.0、2位がニジェールの153.0。シエラレオネの女性の平均寿命は42.0歳(最も短い国はスワジランドの33.4歳)。 同じサイトの情報では、日本が急速に経済発展を遂げる直前の1950-1960年では1位が東ティモールの253.0、シエラレオネは3位で231.5、ドイツは171位で44.5、日本が172位で44.0、最も良い192位はスウェーデンで18.5。 2000-2005年ではエチオピアがちょうど100.0で22位、10.0は7ヵ国あり138位(マレーシアやラトビアなど)。 長い歴史からみれば、日本で子どもが死ななくなったのは、ほんの100年以内の話であり、世界に目を転じれば100年前の日本と同じ現実が「今まさに」存在しています。 私たちが次の日本を担う子どもたちに何を残すべきか、もう一度真剣に考えるべき時代だと思われてなりません。


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