全国の小児科医よ,禁煙運動の先頭に立て!

このエントリーをはてなブックマークに追加

2012年01月04日(Wed) 14:35 by drharasho

故・鴨下重彦先生は、表題の文章で、私達に
様々な檄(提言)を飛ばされています。

2012年はその中の一部でも実現し、
子どもたちがタバコの害から守られるように、
活動を進めていきたいと思います。

-------------------------------------------------------------------------------------

全国の小児科医よ,禁煙運動の先頭に立て!

鴨下重彦
国立国際医療センター
小児科診療 67(6): 871 -871 2004

先日, 日本小児科医会から「タバコから子どもを守ろう」という立派な冊子と
その解説書が送られてきた.
子どもたちのための禁煙運動のキャンペーンであ
る. 遅きに失したと言えなくもないが, たいへん結構なことである. 日本医師
会も数年前, 坪井栄孝前会長の主導によりかなり積極的に禁煙キャンペーンを
展開した. そのきっかけは坪井前会長がWHOの前事務総長のBrundtland女史に
逢われたからという. 彼女はノルウェーの総理大臣を務めた元小児科医で熱烈
な禁煙主義者であり, 5年程前来日したとき日本で街頭にタバコの自動販売機
のあることを強く非難した. 自販機が, 中高生や未成年者の喫煙を容易にして
いるのは自明のことであり, 今回の小児科医会のパンフレットにもそのことが
指摘されている. 何年か前に, 青森県深浦町で町長の英断により町内からすべ
てのタバコ自販機が撤去された. それが全国的に拡がることを期待したが, 残
念ながらそうなってはいないようである. タバコの害悪は三つある. 第一は言
うまでもなく健康被害であり, がんの発生は非喫煙者を1.0とした場合, 喉頭
がん32.5倍, 肺がん4.5倍, 肝臓がん3.1倍など, 他のすべてのがんの発生頻度
も2倍近く高い. また心筋梗塞や脳卒中の頻度も1.7~1.8倍高いという. 問題
は受動喫煙で, ニトロソアミンなど発がん物質や他の有害物質は副流煙のほう
に多いことが明らかにされている. 喫煙者は周囲の人の寿命を奪う加害者であ
ることが, もっと強調されるべきである. 喫煙する妊婦では低出生体重児を生
む頻度が高く, また両親の喫煙とSIDSとの関係もEBMで証明済みである. 第二
の害は喫煙者のマナーの悪さであり, 駅やバス停などで吸殻がポイ捨ては後を
絶たない. 喫煙者は環境美化の敵である. 第三は未成年者の喫煙で, これは明
らかに非行にもつながる. ともかく子どもや赤ちゃんにはタバコの煙は吸わせ
たくない. 日本は先進国の中で突出して喫煙率が高く, しかも若者や女性に高
いことが憂慮される. アメリカでは30年くらい前からスモーカーには厳しくな
り, 企業では喫煙者を重役にしないとか, 喫煙する外科医には手先が細かく震
えるため大事な手術をさせない
とか, 厳しい社会になっている. 私は自分の勤
務する病院では, タバコを止めるか病院を辞めるか, どちらかにせよと強力に
指導している. 小児科医会も学会もすべての小児科医が率先して禁煙運動を進
め, 次世代をタバコの害から守らねばならない. そのためには喫煙者は会の役
職に就かせないとか, 全国の大学の小児科教授諸侯も, タバコを止めないスモ
ーカー学生は研修を拒否するくらいの気構えがほしい.
それが今回のキャンペ
ーンの第一歩であろう. 5月31日はWHOの定める世界禁煙デーである.


「関連資料集」一覧に戻る