アレルギーにならないために_国立成育医療センター研究所免疫アレルギー研究部長 松本 健治

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2012年02月23日(Thu) 10:51 by drharasho

国立成育医療研究センターメールマガジン 第118号(2012/2/23)からの
転載です。受動喫煙防止などがアレルギー防止に重要、という内容です。

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アレルギーにならないために
国立成育医療センター研究所免疫アレルギー研究部 松本 健治


近年、アレルギー疾患にかかる子どもの割合は増え続けており、小学生の二人に一人が
何らかのアレルギー疾患であると医師による診断を受けたことがあると答えています。アレ
ルギー疾患には食物アレルギーやアトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、
アレルギー性結膜炎、じんましん、などいろいろの病型があり、アレルギー体質(アレルギ
ー疾患の家族がいる、IgE抗体が高い、など)の子どもは次々にいろいろなアレルギー疾
患にかかってしまう(アレルギーのマーチと呼びます)事が多いため、長期に渡って治療を
続ける必要があります。

これほどに多くの子どもがアレルギー疾患に苦しんでいる状況がありますと、その保護者の
方々にも大きな負担となりますし、経済的にも大きな問題となる事がしばしばあります。

しかし、私たち小児科医にとって、妊娠中のお母さんから「どうすればこのお腹の子がアレ
ルギーにならずに済みますか?」と言う質問をされると非常に困ります。

なぜなら、現時点で有効と言えるほどのアレルギーの発症予防法がないからです。

 これまでに多くの研究成果が報告されていますが、ほとんどすべてが、こうすればアレル
ギーになりやすくなる、というものです。ですので、こうすればアレルギーになりやすくなるので、
そうしないようにしましょうね、という消極的なアドバイスしかできないのです。


もっとも多くの研究がされているのがタバコの影響です。

タバコの煙が子どもの気管支や肺に傷害を与える事は容易に想像出来ると思いますが、
最近の研究では、妊娠中のタバコの曝露(妊婦さんがタバコを吸うだけでなく、家族が室
内で喫煙しておこる受動喫煙を含めて)であっても、生まれてくる子どもの肺に悪影響を
与える、あるいは免疫系(抗体産生などによって体を感染症から守ってくれる仕組み)な
どに悪影響を与える可能性が報告されています。ですので、最も強くお勧めできることは
受動喫煙を含めて、タバコを止める事です。


一方、妊娠中や授乳中に特定の食物(たとえば卵や牛乳など)を摂取することを控えて
も、生まれてくる子の食物アレルギーの発症予防にはならないことも多く報告されています。
ですので、日本アレルギー学会、日本小児アレルギー学会などは、「食物アレルギーの発
症予防を目的とする、妊娠中や授乳中の特定の食物摂取制限はやめましょう」
と提唱し
ています。(注意:食物アレルギーを既に発症したお子さんの場合は別です。)

 一時期、乳酸菌の摂取がアレルギー疾患を予防するのではないか、と言われて盛んに
研究がされましたが、現時点ではアトピー性皮膚炎の発症が半分程度に減りますが、ア
レルギー体質が改善したり、アトピー性皮膚炎以外のアレルギー疾患の発症が減ったり
する程の効果は期待出来ないことが明らかになっています。

 最近の日本を含む先進工業国でアレルギー疾患が増えている最も大きな原因は清潔
になりすぎている事だと言われています(これを「衛生仮説」と言います)。多くの研究結果
がこのことを支持していますが、この衛生的な環境になった事によって乳幼児死亡率が低
下したり、重症感染症によって命を落としたりするお子さんが大きく減っている事も紛れも
ない事実です。ですので、いきなり細菌やウイルスに子どもをさらす事は危険です。

免疫アレルギー研究部では成育医療研究センターの使命の一つとして、アレルギー疾患
を始めとする慢性疾患の発症予防に積極的に取り組んでゆきたいと考えています。その
ために、アンケート調査や出生児の追跡調査(コホート研究)、患者さんを対象とした臨
床研究、そして試験管内の実験や動物実験などを行う基礎研究などを現在も行っています。

皆さんにも研究にご協力をお願いする事があるかもしれません。
その時は是非とも宜しくお願いいたします。


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